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ホーム > 町の紹介 > 町長 > 第8回 環境省 徳之島自然保護官事務所 自然保護官 渡邊春隆 氏

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更新日:2014年11月7日

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第8回 環境省 徳之島自然保護官事務所 自然保護官 渡邊春隆 氏

テーマ:奄美・琉球の世界自然遺産登録に向けた展望

〔奄美・琉球が世界自然遺産候補地に選ばれた理由と現状〕

対談する高岡秀規町長(左)と渡邊春隆氏(町長)奄美・琉球の世界遺産登録に向けた作業が進められているが、自然遺産になるためには事務レベルでは表面に出ていないような、我々が認識していない多くの課題を抱えているのではないだろうか。

(渡邊)まず、なぜ徳之島が世界自然遺産の候補地に選ばれたか。現在、奄美大島と徳之島、沖縄本島の山原(ヤンバル)、西表島の4地域が選ばれているが、簡単に言えば「そこにしかいない生き物(固有種)が多い」と言う理由で選ばれている。例えば、ここではアマミノクロウサギ、ケナガネズミ、鳥類ではアマミヤマシギ、爬虫類ではオビトカゲモドキなど。世界遺産に登録されるためには、その価値、つまりその生き物達が守られるという事が、法律等で約束されていなければならない。
課題の一点目としては、生き物自体は種の保存法、県や町の条例などで守られているが、その種が生息しているエリアの保護が十分とは言えない状態なので、生息地を守って行くために国立公園の指定が優先課題である。次に、喫緊の課題と感じているのが野生化したネコ(ノネコ)の問題である。

(町長)具体的には?

(渡邊)野生化したネコ(ノネコ)により、アマミノクロウサギやケナガネズミなどが捕食されている事が分かっている。ノネコというのは、世界遺産の価値として位置付けられる動物を捕食するという点で、世界遺産登録にとって最も大きな脅威となっている。

(町長)ノネコ被害が増えている要因もあるのだろうか?

(渡邊)捨てネコが一つの大きな要因。また、徳之島は元々、人口も多く、集落や耕作地が山岳部と隣接しているので、集落や畑にいたネコが山に入って行きやすい環境だと思う。ノネコの被害自体は前からあったと思うが、世界遺産を目指すことを契機に住民の自然保護の意識が高まり、また、各種調査・研究が進んだことから問題が顕在化してきたというのも一つの要因かと思う。
ネコ対策はまさに喫緊の課題だが、次に中長期的な課題を挙げるとすると、徳之島の山岳部の核心地域(コアゾーン)の自然環境は本当に素晴らしいが、世界遺産に登録されるためにはその素晴らしい環境を守るための緩衝地域(バッファーゾーン)を十分に確保する、つまり周辺環境を守って行く必要がある。徳之島の場合は、周辺部のほとんどが耕作地として開発されているので、緩衝地域(バッファーゾーン)の確保が難しい。山岳部の耕作放棄地等を森に戻すという取り組みが求められるかもしれない。また、アマミノクロウサギがサトウキビをかじる被害が出ている場所もある。そういった一部の農家にとってアマミノクロウサギは害獣と捉えられているので、農家と野生生物が上手く共存できる仕組みを模索する必要もあるのではないかと考えている。

〔世界自然遺産登録に向けた課題を解決するには〕

(町長)そのような自然環境を守るために町は条例を制定したが、それがあれば世界遺産に登録されるものだろうか?

(渡邊)単純に条例が制定されただけでは難しいと思う。実行力が伴っていることが重要。昨年度昆虫5種を追加指定した3町希少種保護条例(動植物31種が指定)を例に挙げると、現在、関係者が頑張っている盗掘・盗栽防止パトロールを継続的に実施するなどのように、条例を有効なものにしていく取り組みが必要である。

対談する高岡秀規町長(町長)それらの課題がクリアーできれば、世界遺産登録を果たせる可能性は高い?

(渡邊)今後、どのような課題が出てくるか分からないが、今のところ、中長期的な観点から徳之島として指摘される可能性が高いと言われているのが、先ほどのバッファーゾーンの問題。後は、島の北部(天城岳周辺)と南部(井之川岳周辺)の生息域が県道と畑地で分断されている事が上げられる。

(町長)どのような解決策があるのか?

(渡邊)森を再生して生態系回廊(コリドー)のようなものを作り、南北の森をつなげるといった取り組みが必要になるかもしれない。

(町長)世界自然遺産登録に向けて、具体的に我々がすべきことは?

(渡邊)ゴミをポイ捨てしないようにする、夜間、山道を運転する際はクロウサギ等に注意してゆっくり走るなど、どんな些細なことでも良いので実行に移して欲しいが、やはりネコによる問題を解決することが喫緊だと考えている。一番は、ネコをしっかり住民に飼ってもらうことだと思う。3町は今年4月1日から「飼い猫の適正飼養条例」を施行し、飼い猫の役場での登録を義務付け、飼い猫の遺棄やノラネコへのみだりなエサやりを禁止し、さらに飼い猫の室内飼いや避妊・去勢手術を推奨しているが、住民には中々浸透していない。

(町長)条例には罰則規定が無い。野放しというのも影響しているのでは?

(渡邊)確かに、放し飼いにしている人が多い。しかし、ネコはなるべく室内で飼ってもらった方が良いと思う。交通事故や感染症のリスクも少なくなる。また、飼いきれなくなったネコを山に捨てるという行為はもってのほか。

(町長)年配の人は、可愛そうだからとノラ猫にエサを与えてしまう。

(渡邊)エサをみだりに与える事も3町の条例では禁止されている。指導を徹底して頂きたい。

(町長)広報等で周知に取り組んではいるが、全ての町民が条例を理解しているわけでは無いので、難しい課題と言える。

(渡邊)世界遺産登録に関する住民説明会などでは、私も必ず猫の問題に言及する。参加者に意見を聞くと、猫の鳴き声や悪臭などに困っている人もいる。他の集落から、自分の集落に捨てに来る人がいるという意見もある。町サイドからの条例の周知も強化して頂きたい。

(町長)ノネコとノラ猫の違いは?

(渡邊)人に依存しないで山野で自活しているのがノネコで、集落内などで人に餌付けなどをされているが特定の飼い主がいないのがノラ猫。

(町長)ノネコ対策は、実際に取り組んでみないと分からない事も多い。専門の獣医も必要だ。

(渡邊)現在、徳之島には動物病院が無く、小動物専門の獣医もいない。それも一つの大きな課題だと思う。

〔管理体制の整備〕

(町長)国立公園に指定された場合、必要な施設は全て国が造る事になるのか?

(渡邊)そうではない。どこにどういった施設が必要か関係機関で検討しながら、環境省がお手伝いできることはしていくという形になる。海岸部分には、しっかりした施設がほぼ整っている。今後、順調に国立公園・世界遺産となれば、今度は山岳部分を見たいと思う観光客が増加するだろうから、山岳部をどう見せるかが今後の大きな課題と言える。ハブの問題も考えなくてはならないし、登山道沿いには多くの希少植物が自生しているので、登山道を整備する場合は近自然工法などの自然環境に配慮した施工法を用いる必要がある。核心部の登山道を利用する場合は、ガイドの同行を義務付けるといったルールを事前に決めておく必要がある。

(町長)ビジターセンターなどの展示施設を作り、登山道沿いの希少植物などを移植して観てもらうことなどはできないだろうか。

対談する渡邊春隆氏(渡邊)徳之島の自然を紹介し、情報発信する施設は必要だと思う。場所や規模、展示内容、管理体制などを含め、今後、県や3町と話し合っていきたい。

(町長)アマミノクロウサギは夜行性のため、ナイトツアーなどが実施されているが、必ずしも見られるわけでは無い。施設で見てもらうような方法もあると思うが。

(渡邊)生態には不明な点も多く、まず飼育の技術やノウハウを確立するなどクリアーしなくてはならない課題がたくさんあり、直ぐに展示するのは無理だと思う。仮に見せるとなった場合、夜行性と言う特質から工夫も必要だ。

(町長)現状では、山よりも海を選ぶ観光客が多いと思う。

(渡邊)現状では海がメインだと思うが、今後は山岳部に集中することも想定される。
屋久島では、縄文杉周辺へ利用が集中した結果、登山道周辺の自然環境の悪化、し尿処理の問題などが出てきている。徳之島においても利用が山岳部に集中した場合、同様の問題が想定されるため、利用の分散化を図ることも検討する必要がある。例えば、集落を見てもらうツアーなどが興味深いと思う。

(町長)登山口の周辺地域を生かすという事か?

(渡邊)屋久島では、「里のエコツアー」という取り組みが行われている。集落の人が観光客を案内しながら、集落の歴史や文化などを紹介し、観光客からも好評だと聞く。徳之島も景観や文化が魅力的な集落が多いと思うので、屋久島に学べないかと考えている。

(町長)そのようなツアーには、観光客向けの郷土料理も必要になる。登山口周辺の畦、山、金見、手々などの集落をどのように見せるか。今のうちから考えなければならない。

(渡邊)集落探索マップなどを作ると良いと思う。自然だけでなく、島を丸ごと見てもらう。

〔世界自然遺産登録を実現するために〕

(町長)国立公園指定に向けたスケジュールの進捗状況は?

(渡邊)なるべく早急に実現したい。国立公園の指定は「奄美群島」として行うので、群島一体で足並みをそろえて行かねばならない。

(町長)世界自然遺産登録地の成功例として上げられるのは屋久島だろうか?

(渡邊)遺産登録後の観光客の増大に伴い、宿泊施設やバス・レンタカーの台数が倍増し、観光ガイドの就業者も大幅に増加している。

(町長)人口の変化は?

(渡邊)県内の離島はおおむね右肩下がりだが、屋久島に関しては遺産登録後横ばい、もしくは微増で推移している。第3次産業は大きく伸びているが、第1次産業には中々効果が波及していないのが現状と聞く。

(町長)第2次(加工)産業が無いと第1次産業が伸びない。つまり、加工品が無いと所得の増加に結びつかない。生産農家の皆さんが家内工業的に加工品製造までしてほしい。ヨーロッパは、農家がワイン製造を担っている。

(渡邊)なんとか、農家にもメリットがあるような世界遺産を目指したいと考えている。

(町長)農家の皆さんに、家内工業的に取り組む意欲を持ってほしい。土産品は結構な売り上げになるが、地元で生産されているのは黒糖ぐらい。島外で作り、徳之島土産として販売している。なぜ、そこに目を付けてもらえないか、まだまだアピールが足りないと感じている。

(渡邊)お隣の奄美大島なら鶏飯があるが、徳之島なら“これ”という料理やお土産品がありそうで無い。そのような物があれば、世界遺産と絡めることができる。例えば、「アマミノクロウサギが出る畑で育ったサトウキビで作った黒糖やキビジュース」など、「佐渡のコウノトリ米」や「対馬のヤマネコ米」のように付加価値を付ける事も考えられる。農家にとってもメリットになれば、環境配慮型、希少種配慮型の農業につながって行くのではないだろうか。

(町長)畑を製糖用と別にし、小さな面積で無農薬栽培しジュースとして出す。さらには、サトウキビの皮を剥いで実の部分のみを絞った黄金色のジュースを振る舞う事もできる。今後の町の課題であり、取り組み次第で第1次産業も自ずと伸びるような施策も考えられる。

(渡邊)徳之島町は、広報紙などで世界自然遺産登録に向けた記事を連載しPR活動をしており、自然保護パトロールもしている。今後は企画課のみならず、世界遺産登録に関連する農林水産課や耕地課、建設課、住民生活課などを含めたさらなる横の連携が必要だ。

対談する高岡秀規町長と渡邊春隆氏(右)(町長)世界遺産登録に向け、課の連携による委員会の設置を検討したい。

(渡邊)町に協議会ができて横の連携が生まれることは大変嬉しく思う。天城町でも課を横断する世界遺産連絡会議を立ち上げ、必要に応じて会合を開き情報を共有している。

(町長)観光客をどのように向かえもてなすか、観光協会との連携も必要と思う。

(渡邊)自然・文化を統合した観光ビジョンのようなもの、あとは何本かの観光モデルコースが必要と考えている。協会にリーダーシップを発揮してもらえればと思う。

(町長)農作物、地産地消などに取り組んでいるが、競争力は弱く他の地域と差別化するのは難しい。観光客が来れば、それで潤うという意識が強いが、そう甘くは無いと思う。

(渡邊)観光客のニーズを把握し、観光客に選んでもらわなくてはいけない。

(町長)奄美大島は、都市部との直行便が就航しており、条件面で恵まれている。観光客のニーズを的確に把握する能力が必要だ。来年度は、世界自然遺産登録に向けた協議会のようなものを作り対応するなどを考えたい。

(渡邊)徳之島には、ゆっくりとした時間を楽しんでもらう観光が合っていると思う。島に住んで一年になるが、ここは、島民の皆さんが思っている以上に魅力あふれる島だと思う。自然は文句なしに素晴らしいし、群島の魅力をコンパクトに凝縮した島と捉えることができると思う。奄美大島にあるクロウサギが住む森があるし、沖永良部のような立派な鍾乳洞もあるし、与論島のような素晴らしいビーチも徳之島にはある。また、自然だけでなく、闘牛をはじめとした文化、人も大変魅力的だと思う。

(町長)我々も世界遺産登録を見据えた準備を進めなければならない。集落の施設を整備するなど、具体的な方策に取り組みたい。

(渡邊)世界遺産登録への取り組みをきっかけに、地元の方たちがもう一度島を見つめ直し、ここで生まれ育った人にとっては「当たり前」だったものが、「宝物」として再認識されることが最も重要な点で、全てのスタートラインだと思う。さらに、なるべく多くの島民が、その「宝物」である自然や文化を後世に残して行こうといいう気持ちになってくれれば有り難いと思っている。

(町長)地域を再発見する機会にしたい。徳之島はマスツーリズムには向いてないとされるが、島に魅力を感じる人ならリピーターになる確率も高いと思う。世界自然遺産登録に向けては、考えるべきことがたくさんありそうなので、しっかり取り組んで行きたい。本日は誠に有り難うございました。

渡邊 春隆氏 略歴渡邊春隆氏写真


 

1986年(昭和61年)3月:宮城県生まれ。
2011年3月:京都大学大学院卒
同年4月:環境省入省。本省(東京)自然環境局野生生物課に配属され、絶滅危惧種の保護・増殖事業を担当。九州地方環境事務所(熊本県)、奄美自然保護官事務所を経て、2013年10月の徳之島自然保護官事務所開設と同時に着任、現在に至る。
趣味:魚釣り、ダイビング、野球

お問い合わせ

所属課室:企画課広報統計係

鹿児島県大島郡徳之島町亀津7203番地

電話番号:0997-82-1111

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