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更新日:2014年4月8日

町の論客バナー

第6回 マリンサービス「海夢居」 オーナー 鈴木 竜爾 氏

テーマ:起業と観光振興について

〔徳之島観光の現状における取り組み〕

対談する高岡秀規町長(奥)と鈴木竜爾氏(町長)徳之島でダイビングショップを始めたきっかけは?

(鈴木)学生の時にダイビングインストラクターを務めたことがあり、徳之島の持つポテンシャルに興味を持っていた。大学卒業後、ダイビング業界で様々な経験を積み、ダイビング指導者を育てる仕事を通じて、都会のダイバー・お客様が“今、何を求めているか?”を学んだ。それを実現できるのが、ここ徳之島という結論に至った。

(町長)ダイビング業を成り立たせるのは難しかったのではないか?

(鈴木)島に来るまでに築いた業界とのつながりもあり、コンスタントに団体客にお越し頂くことができている。また、地元の顧客向けに、経済状況が本土とは異なる実情に合わせたサービス内容、経営を心掛けている。

(町長)顧客確保の具体的方法は?

(鈴木)ほぼ100%が、インターネットによる申し込みだ。日々、ホームページやブログ、facebookを通じて情報発信し、顧客獲得につなげている。それを、アナログ(現場)でフォローするという両面によって、この島のファンになって頂くようにしている。

(町長)どのように島の魅力を伝え、PRしているのか?

(鈴木)単純に「海がきれい!」とアピールするだけでは、100%無理と言える。多くの場合、航空運賃が高いなどのデメリットが先行し、弱気になりがちだ。デメリットをメリットに変え集客に結び付けるためには、他人とは違う視点と表現力を身につけ差別化を図ることが必要だ。

(町長)旅費の高さや乗り換えの不便さを敬遠されないか?

(鈴木)都会に住む人が興味をそそられるように工夫している。例えば、「確かに、運賃は高い。でも、飛行機や船を乗り継がないとたどり着けない、観光地化されていない日本の島って他には無いでしょう?形あるものは何も無いけど、形の無い大事なものが何でもある島だよ」と説明するなど、不便さを魅力にする方法を考えている。この島には“何も無いぜいたく”という、最大の観光資源がある。

(町長)ホテルなどの宿泊施設については?

(鈴木)それぞれで選んでもらっている。ホテル派もいれば、旅館に泊まりたい客もいる。街中や郊外など、大事なのはお客様が“どんな休日を過ごしたいか?”で、それぞれのニーズに従って宿も決める。

(町長)ダイビング以外の時間はどのように過ごしているのか?

(鈴木)実際、海にいる時間は限られており、それ以外の時間をどのように過ごすかも大事なポイントになる。中でも、夜の食事の時間は大事。なるべく島らしい雰囲気を味わいたいというお客様が多い。島内の飲食店は、接客面などで洗練されているとは言えない面もあるが、それを他の観光地化された島とは違う魅力と感じてくれている。

対談する高岡秀規町長(町長)かえって都会に行った際に、何をするにも不便と感じることが多い。

(鈴木)この島には、“何もしないぜいたく”というものがある。今の都会では、ありえない贅沢の形だ。

(町長)そのような価値観を持った客は多いのか?

(鈴木)時間に追われることなく、「島で休日を過ごす」ことに価値観を持つ人たちで成り立っている。「何も無くて良いところ!」を印象付けるようにしている。

(町長)リピーターも多いということか、客層などは?

(鈴木)半数以上がリピーターと言える。ダイビングをするためにお金を貯めてくる一般の会社員はもちろん、医者や会社経営者など様々だ。必死に働いたお金や、やっと取れた休日を徳之島旅行に使って頂く。その重みを忘れてはいけないと思っている。

(町長)カップルや出会いを求めてくる客もいるのでは?

(鈴木)そこは沖縄の得意分野であり、ターゲットとはあまり想定していない。なんでもかんでも多くを追い求めるのではなく、棲み分けが必要だと考えている。

〔観光振興に向けた方策〕

(町長)奄振法の改正により航空路などの運賃が軽減され、観光などの産業振興への効果が期待されている。

(鈴木)現状の島では大きな事業は難しいが、スモールビジネスなら十分に利益を上げられる。ビジネスの拡大は、周囲の状況に合わせて適切に判断する。

(町長)観光面振興に向けた課題も多い。

(鈴木)島らしいのんびり感は残しておくべきと思う。“便利できれい”を追い求め、沖縄型観光の後追いをしてはいけない。やはり重要なのはガイドの質であり、ビジネスとして成り立つガイドの育成が急務ではないか。

(町長)求められるガイド像などは?

(鈴木)ガイドには正確な知識と安全管理は当たり前、それに加え、お客様を楽しませるエンターテイメント性が求められている。学術的なガイドでは、リピーターは付かない。

(町長)多くの場合、その場所などを売り込みたいが故に、教養の押し売りになりがちなのも確かだ。

(鈴木)観光地などに行った際に感じる人も多いと思うが、知識偏重のガイドでは、聞く方も疲れてしまう。あくまでも、楽しい時間を作り出すことがガイドの仕事だ。

(町長)飲食店選びは、もっと難しいのではないか。「徳之島ならではの島料理」などと聞かれた場合に困る事が多い。

対談すると鈴木竜爾氏(鈴木)確かに、居酒屋などの料理で奄美や沖縄との違いは出しにくいが、地元食材は呼び名が異なり面白い。オリジナリティを出せるよう、既に先を見据えて取り組み始めている元気な飲食店経営者もいる。

(町長)観光連盟に提案しているのが唄者の確保。お客さんが来たから聞かせるのではなく、そこに行けば自然に島唄が聞こえてくるような飲食店はどうだろうか?

(鈴木)そのような店があれば、是非利用したい。

(町長)ただ、「行政に取り組んでほしい」や「民間がすべき」などの意見がある。

(鈴木)スモールビジネスを起業するには個人の能力が重要であるが、よりお客様を喜ばせるために行政の支援があれば心強い。行政と民間観光業者との企画会議を開き、3町連携による支援策を検討してはどうだろう。

〔世界自然遺産登録に向けて〕

(町長)支援という面では、世界自然遺産登録に向けた取り組みと絡めて行くことが、より現実的で財政支援を受けられる確率が高くなるとみている。

(鈴木)私自身も、次なる「世界自然遺産登録を目指す島」を唱って、既に観光客に呼びかけている。「世界遺産」というブランドをどのようにビジネスへ活用するかは、行政に頼るだけでなく、それぞれの事業者が取り組むべき課題である。

(町長)航空路の運賃軽減は地元住民だけでなく、島外からの観光客などへの適用も叫ばれている。

(鈴木)航空運賃が安くなれば、これまでと客層が変わることも予想される。

(町長)沖縄などと比較されるということか。

(鈴木)“運賃が安いから” という理由で他の地域を選んでいた観光客が、徳之島旅行もするようになる。価格や様々なサービスを沖縄などと比較され、非常にシビアになる。

(町長)どのような対策が考えられるか。

(鈴木)観光メニューのバリエーションとして、徳之島にしか無い時間と空間を演出することだ。“沖縄とは全く違う島だ”と感じてもらわなければ成り立たない。観光客が増えれば、観光地とお土産品店、飲食店や宿泊施設が一概に潤うと考えるのは危険だ。客層が変わり、リスクも多くなることを考慮しなければならない。

(町長)行政に対する要望や提言などは?

(鈴木)現状のように不便な面があっても、どこにも負けないものが一つ欲しい。例えば、公共のトイレはいつ利用しても“ピカピカ”とか、どの観光地に行っても“ゴミが一つも落ちていない”など。ある意味では、計算された田舎臭さかもしれないが、お客様を満足させられる側面を持っている。何も便利なものは無いが、「おもてなし」はツボをおさえていることが大事だ。

(町長)観光客の増加による地域活性化は重要だが、経済的な豊かさのみを追求し、「豊かさ余って心を失う」ようになってはならない。古来よりある「ユイ」の精神を守りつつ、経済振興を図りたいと考えるが、両立するのは難しい課題だ。

(鈴木)3町の行政が連携し、「徳之島とはどんな島なのか」という定義を明白に打ち出してほしい。今言われている闘牛、長寿、子宝、スポーツ、ユイなどを個別に訴えても、一過性に終わってしまう。

(町長)イメージ戦略としては、なにか一つをメインに売り出すケースが多い。

(鈴木)一つ一つはどれも素晴らしい魅力だが、個別ではビジネスマーケットが狭い。

(町長)それぞれの管轄が異なり、利害関係にも差がある。共通のスローガンを考えるということか?

対談する高岡秀規町長と鈴木竜爾氏(右)(鈴木)その通りだ。難しい事だと理解しているが、それができなければ観光業は個別のスモールビジネスで終わる。心に響き、徳之島を一つにするキャッチコピーを考える。「3泊4日で元気みなぎる島」などはどうだろうか?

「闘牛を観戦し、島民の熱気を肌で感じる」「住民総出で応援するトライアスロン」「元気な高齢者の話を聞く」「子どもたちの元気なあいさつ」…など、“元気になる”というキーワードを軸に、様々なメニューを取り込み売り出す方法だ。

(町長)ダイビングでも活用しているのか?

(鈴木)例えば、単に「ウミガメに会える島」では、珍しくも無いので差別化はできない。ウミガメに出会えた時に「この島は長寿の島だから、長生きの象徴であるウミガメがとても多い」と表現する事で物語ができる。常にテーマを決め、徳之島らしいガイドをするように心掛けている。

(町長)私は「熱い島」とアピールしている。

(鈴木)「暑苦しい」では今の世代には響かないので駄目だが、「熱い」は良いと思う。但し、キャッチコピーはビジネスにつながるのかを考え、変化の速い時代に合わせて何年か経ったら見直すことも必要だ。

(町長)観光メニューによって表現を変える方法もあるのでは?

(鈴木)“徳之島”のキャッチコピーを共通のステッカーやポスター、ホームページなどで使用できるようロゴマークを作成し、各社の名刺や封筒なども含めてあらゆる場所で活用すれば、一層のイメージ統一につながると思う。「徳之島ならでは」と言えるものを、3町の行政やトップで話し合って築いてほしい。

(町長)スモールビジネスと観光振興をキーワードに、コンセプトを作り検討して行きたい。本日は、貴重なご意見有難うございました。

鈴木 竜爾氏 略歴鈴木竜爾氏写真 


1973年(昭和48年)10月 千葉県生まれ。
東海大学海洋学部卒
学生時代及び大学卒業後も徳之島のダイビングガイド業務に携わった後、全国各地でダイビング指導者の育成や認定業務に8年間従事する。
2009年5月に徳之島へ完全移住し、スキューバダイビング専門店のマリンサービス海夢居を開業、2011年には海をテーマにしたギフト部門「海夢居堂」を設立する。
2013年より「徳之島スノーケリング教室」(日本スノーケル協会奄美支部 徳之島事務局)を開設し、子供たちを対象としたシュノーケリングや自然観察会を実施、現在に至る。
マリンサービス海夢居(外部サイトへリンク)

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所属課室:企画課広報統計係

鹿児島県大島郡徳之島町亀津7203番地

電話番号:0997-82-1112

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