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更新日:2013年5月1日

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第1回 潮風出版代表 水野 修 氏

テーマ:世界遺産と観光~奄美・琉球の世界自然遺産登録に向けて~

〔はじめに〕

対談する高岡秀規町長(左)と水野修氏(町長)国は、奄美・琉球を世界自然遺産候補地としてユネスコの暫定リストに追加することを決めたが、徳之島の状況をどのように考えるか見解を伺いたい。

(水野)徳之島は、世界自然遺産登録に値する価値のある島ではあるが、様々な課題を抱えている。日本復帰後、奄美群島振興開発特別措置法による復興事業が始まった。その事業内容が地元ではなく国の主導で進んだことにより、同時に自然破壊が進む結果となった。私が、昭和40年代に役場に入った頃は、島内も未開発地が多かったため、行政側も「ぜひ導入したい」と開発事業に飛びついた経緯がある。

その結果、島は雨が降るたびに赤土が流れ出し、隆起サンゴのリーフに囲まれたタイトプール内に自生するサンゴ礁の壊滅が進行した。

また、燃料が石炭からガソリンに代わり、規制が整備されるまでの間、沖合を航行する船舶が廃油を垂れ流した。その廃油ボールが、魚貝類や海藻類などの海洋生物に大きな被害を与えた。

〔徳之島の現状と課題について〕

(町長)そのような中、どのような対策を取るべきと考えるか。対談する水野修氏

(水野)昭和40年代に進んだ赤土流出や廃油ボールなどによる自然破壊は、海や山の浄化能力を奪い、それ以前の自然豊かな島を知っている我々世代は多いに疑問を抱いた。かつての豊かな自然環境を取り戻してこそ、“世界自然遺産”として誇れるのではないか。

例えば、黒潮と海藻が一緒に北上していた頃は、流れる海藻が魚類にとっては産卵の場所となり、それらの小魚を狙って大型の魚類が集まった。人間にとっては格好の漁場となる自然の営みが繰り返されていた。

つまり、島にしか無いもの、本土では見られない元来の島の価値を地元が発信して行かなければならない。例えば、井之川のハマオリ(浜下り)のような伝統行事に、徳之島ならではの習俗や文化が様々な形で今も継承されている。

(町長)ハマオリの本来の意味はどのようなものか?

(水野)ハマオリは元来、島内全域で行われていた行事であり、時代の変遷に伴い集落ごとに簡略化され内容も変わってきた。家族やいとこだけでなく、遠い親戚まで含めた一族が一堂に会し先祖を迎え、一晩かけて地区内の家々を回って踊り明かし、先祖を送るとされている。根幹にあるのは、先祖に対する郷愁であり、数千年前から連綿と引き継がれてきた古い行事と言える。このような習俗を守るためにも、古式に則ってハマオリ行事を続けている方々から話を聞くなどの記録を残す必要がある。

〔世界自然遺産登録に向けた取り組みについて〕

対談する高岡秀規町長(町長)世界自然遺産登録について挨拶をする際など、観光客誘致ありきではなく自然を守ることが元来の目的であり、豊かな自然を守ってこそ観光客の増加に結び付くと述べている。

(水野)そこに暮らす人々の精神文化を含めて保存継承することで、自然も文化も磨かれ、独自の輝きを増してくる。

(町長)観光客を山に案内することは、ハブに遭遇する危険性があり、希少動植物保護の面からも展示する場所を設けて説明するのが良いのではないかと考えている。

(水野)植物については可能だが、昆虫は難しい。クワガタなどは取り尽くされた。不断の努力で自然を再生してほしい。集落行事や様々な祭りも、その地域の自然観と歴史観を通して培われる。復帰60周年の節目として、改めて見つめ直す機会にすべきだ。

(町長)島を訪れる観光客に対して、どのようなもてなしをするかが課題と考えている。例えば、島唄を聞きながら食事ができる場所を設けるなどの方法があると思うが。

(水野)どこかの地域をモデル地域として取り組んではどうか。井之川集落のように伝統行事を地域ぐるみで保存継承している地区が良いのではないか。

〔島の自然、歴史と文化を保存継承するために〕

(町長)世界自然遺産登録に向けて、それぞれの地域に息づく文化にも触れる機会を設ける必要があると思う。

(水野)本土在住の知人に尋ねたところ、世界遺産に登録されるのは奄美の一部でしかなく、群島全域は難しいと聞いた。その理由として、地元住民の意識レベル向上が課題に上げられている。こういう町を作りたいという、町長のイメージを伝える必要があるのではないか。やはり神之嶺校区が望ましいと思う。西欧でも、祭りの時期には故郷に帰るという習慣があり、井之川集落出身の方々も浜下りに合わせて帰省している。

(町長)そのような伝統行事を守るためにも、砂浜などのように行事を営む場所の再生が必要になるのではないか。

(水野)かつては、台風の襲来によりサンゴ礁が洗われ砂浜が再生していた。浜下りも、ほとんどの集落で行われていたが、高齢化で引き継ぐ世代が減少し廃れてしまった。

(町長)浜下りの再生を、奄美群島振興開発(奄振)事業で要望することはできないかと考えている。活発な意見交換を行った高岡秀規町長(左)と水野修氏

(水野)奄振事業は奄美大島本島に比べ、徳之島3町の占める比率が低いと言えないか。

(町長)その点に関しては、今年度から若手職員を国土交通省に派遣するなど対策に乗り出している。国とのパイプを強化し、職員のレベルアップを目指すつもりだ。

(水野)主要道路である県道を見ても、通学路内に歩道の無い道路がある。特に母間小学校の校区はその典型と言え、先にすべきことが後回しにされている。スポーツ活動で総合グラウンドを利用する小学生も危険だ。島はドライバーのマナーが悪く、沿道で横断を待つ小学生を先に通してあげることをしない。畑地帯総合開発事業などの農業基盤整備だけでなく、島の将来を担う子どもたちが安心して通学し、勉学や運動に励めるような環境整備を優先してほしい。

水野 修 氏 略歴水野修氏写真


1934年(昭和9年)5月徳之島町神之嶺生まれ
1966年(昭和41年)徳之島町役場入庁、広報統計係、中央公民館長、企画課長を歴任
南日本新聞に「七島灘を越えて」を連載するなど、積極的に執筆活動に取り組む。
「徳之島民話集」(西日本新聞社)、「炎の功績」(潮風出版)など著書多数。
徳之島の様々な話題を精力的に取材し、季刊誌として1991年(平成3年)8月15日に刊行を始めた「潮風」は、隔月刊などを経て94号まで発刊を続けている。

お問い合わせ

所属課室:企画課広報統計係

鹿児島県大島郡徳之島町亀津7203番地

電話番号:0997-82-1112

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