4奄美群島国立公園▲ 集落と世界⾃然遺産登録地が隣接し、数千年にわたって⾃然と⼈が共⽣し続ける徳之島▲ 井之川岳山頂周辺に広がるスダジイ2017年3月7日、奄美群島国立公園は34番目の国立公園として指定されました。多くの固有の動植物が生息する自然と、住民の生活が深くかかわってきた歴史を評価する「環境文化型の国立公園」という特徴を持っています。自然環境や景観だけではなく、住民と自然との⻑い関わり合いを含めて保全しようという考え方です。奄美大島の場合、状態の良い広葉樹林が国立公園の大部分を占めますが、徳之島では山域だけではなく、100mを超えるほど発達した琉球石灰岩台地に残る自然度の高い地区も国立公園に指定されています。国立公園指定後の通行車両の増加と、それによる希少野生動物の事故死、生息環境の悪化、希少野生植物の盗掘や損傷、さらには国立公園としての利用体験の質の悪化なども心配されたことから、公園内に位置している3本の林道(林道山やまクビリ線、林道剥はげ岳だけ線、林道三み京きょう線)には、ゲートが設けられ、進入禁止となりました。通行するには、認定エコツアーガイドのツアーに申し込むか、林道通行の事前申請が必要になりました。現在、徳之島の国立公園区域は、生活環境と隣接してはいますが、自然環境は良好な状態で保たれています。世界自然遺産2021年7月26日、奄美・沖縄の国立公園の一部が、生息する固有種の多さと、その生態系の多様性をユネスコ世界遺産委員会で評価され、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び⻄いり表おもて島じま世界自然遺産」という名称で世界自然遺産に登録されました。奄美・琉球は2003年に小笠原諸島、知しれ床とこ半島とともに世界自然遺産候補地となりましたが、2018年、ユネスコの諮し問もん機き関かんであるIUCNからの登録延期勧告があり、2019年に再申請。新型コロナウイルス感染拡大で審査が延期され、2021年7月にようやく登録が決定されました。島民の生活する区域に隣接し、昔から人々が利用してきた普通の森が、世界自然遺産の推薦区域や緩かん衝しょう地ち帯たいとして登録されたのです。徳之島では裏山が世界自然遺産という地区も存在します。ミカン畑やサトウキビ畑にアマミノクロウサギ、住宅地の裏にオビトカゲモドキやイボイモリがいることは徳之島では珍しいことではありません。これまで以上に、徳之島のどこからでも見ることができる世界自然遺産を大切に見守っていきましょう。17『自然編』の第4章奄美群島国立公園と世界自然遺産
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