徳之島学へのいざない―とくのしま今昔―
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▲ ナゴラン▲ タニムラアオイ▲ トクノシマヒラタクワガタ▲ オオハマボウ▲ トクノシマヤマタカマイマイは、樹じゅ幹かんや岩などに着生します。花が美しく香りも良いことから昔から栽培されています。徳之島では個体数が多いですが、絶滅危惧種に指定されていて、それ以外の島々ではめったに見られない希少種です。また、島内全域に広がった松枯れの影響で数が激減していることが心配されています。その他の固有種ウマノスズクサ科のタニムラアオイは徳之島固有種で、萼がく片へん(花を守る部分)が白く花びらのようになっています。天城岳を中心に分布しますが、そこから離れた石灰岩台地にも群ぐん落らくがあって、変わった分布域を持ちます。同じく徳之島固有種のハツシマカンアオイも三さ方そん通つじ岳から天城岳、寝ね姿すがた山やま一帯に分布していますが、トクノシマカンアオイ(徳之島固有種)は井之川岳や犬田布岳周辺にのみ分布する特徴を持っています。このほか、サトイモ科のトクノシマテンナンショウは、井之川岳にしか生息していない徳之島固有種です。同属のオオアマミテンナンショウは徳之島固有亜種で、犬田布から天城町で見られます。アマミテンナンショウは奄美大島・徳之島両島の固有亜種で、標高の高いところに自生しています。これらは分布域が重なることはないようです。海辺の植物で、絶滅が危惧されているものにヒメスイカズラ(徳之島以南に分布)、カントラノオ(甑こしき島しまや奄美大島、徳之島などに分布する日本固有種)、ホウザンツヅラフジ(国徳之島の代表的な甲こう虫ちゅう類るいは、奄美大島との共通種が多い特徴があります。ヤマトサビクワガタは、昔、佐さ多た岬みさき(鹿児島県南みなみ大おお隅すみ町ちょう)で発見されたことがありますが、その後の発見例はなく、他の島々では発見されていないため、ほぼ徳之島固有種の状況のようです。それ以外のトクノシマノコギリクワガタやトクノシマヒラタクワガタは与よ路ろ島じまのものとよく似ていて、マルダイコクコガネなども奄美大島のものとよく似ているそうです。トンボ類はイトトンボやヤンマなど多くの種類を見ることができますが、徳之島固有亜種なのは赤っぽい橙だいだい色いろの足を持つトクノシマトゲオトンボだけで、トクノシマオオアブやトクノシマケシカミキリ、トクノシマチビマルハナノミなどの昆虫は、奄美大島のものと共通種です。陸に棲すむ貝類(カタツムリの仲間)には、トクノシマの名を冠したものが10種類以上あります。ほとんどが徳之島固有種か固有亜種です。絶滅危惧Ⅰ種に指定されているものだけでもトクノシマギセル、トクネニヤダマシギセル、トクノシマツムガタノミギセル、美しい模様を持つトクノシマヤマタカマイマイ、トクノシマビロウドマイマイ、毛の生えたトクノシマケハダシワクチマイマイ、トクノシマオオベソマイマイといったものがあり、いずれも希少な固有種で個性に満ちています。13内では徳之島だけに分布)、オキナワギク(奄美大島、徳之島、沖縄島北部に分布する日本固有種)などがあります。なお徳之島町の町花に指定されているオオハマボウは、アオイ科の常じょう緑りょく高こう木ぼくで、種子島以南の島々に分布しています。徳之島の童謡「ゆうなの木の下で」の「ゆうな」はオオハマボウの方言です。徳之島の特徴的な昆虫『自然編』の第2章、第3章1.陸の生き物たち

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